新型コロナウイルスへの治療薬として期待されるアビガンって?
「アビガン」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?富士フィルム富山化学が開発した抗インフルエンザ治療薬ですが、現在世界中で流行している新型コロナウイルス感染症に一定の効果が期待されるとして、日本政府は生産と備蓄を表明しました。
そんな一躍有名になった「アビガン」ですが、どういう化学物質かご存知でしょうか?アビガンの正式名称は「6-フルオロ-3-ヒドロキシピラジン-2-カルボキサミド」と呼ばれます。
済みません、お願いだからまだページを閉じないで!!名前なんてどーでもいいのです。とにかく巷で「アビガン」と呼ばれているお薬がれっきとした化学物質ということが分かりましたね。
アビガンはピリジンを出発原料として、モノクロル酢酸、マロン酸ジエチル、アミノマロン酸ジエチル塩酸塩を経て製品となります。図にするとこんな感じ。
現在、日本の化学メーカー各社が日本政府からの直接の要請を受けて、これらの原料をバンバン作る準備をしています。今の備蓄分は中国からの輸入品に頼っていたので、安定供給のためにも日本国内で原料をかき集めることにしたからですね。
そんな有望株のアビガンですが、各所でも一部で報じられている通り、催奇形性が懸念されています。催奇形性とは、妊娠のある時期に服用すると、胎児に奇形が生じるおそれのあるものです。有名なものですとサリドマイドがあります。睡眠薬として多く服用されたサリドマイドには催奇形性があり、四肢が異常に小さな赤ん坊が生まれ、また死亡率が高くなるなどの薬害事件に発展しました。
このサリドマイド事件は、大変な社会問題に発展し、その「お腹にいる我が子が奇形かもしれない」という母親の恐怖は、ロマン・ポランスキー監督のアメリカ映画『ローズマリーの赤ちゃん』で、「悪魔の子を孕んだかもしれない」と疑心暗鬼になり次第に狂っていく母親の姿に象徴され描かれました。当時は超音波装置もなかったので、生まれてくるまでお腹の中の胎児の様子が分からなかったのです。
その他の催奇形性を持つ身近な物質としてはエタノール(お酒)、ニコチン(タバコに含有)があります。妊娠中の女性がお酒やタバコを控えなくてはいけないと指導されているのは、そういう理由なんですね。妊娠中の方はくれぐれも気を付けて。
ちなみに催奇形性はGHS有害性区分において、「生殖毒性」というカテゴリーに該当します。
「GHSってなに?」という方は、こちらの記事をご一読ください。
なお、アビガンに次いで名前を聞くことが多い、エボラ出血熱治療薬候補「レムデシビル」という薬も、新型コロナウイルス感染症の重症患者に投与したところ、半数が回復したとのことで、有望視されていますね。こちらは米国の製薬会社、ギリアド・サイエンシズが開発した治療薬になります。
日本でも厚生労働省が特別承認したと話題になりましたね。アビガンとレムデシビル、どちらの治療薬に軍配が上がるかは分かりませんし、そのほかにも候補となる治療薬は沢山ありますが、その治療薬のメリットとデメリットには私たちの様な一般市民も注視していきたいですね。
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