ボクはわるい化学者じゃないよ
第一に、私はあなたの敵ではない、と信じて頂きたいです。
怪しげな化学物質を「安全ですよ!」と喧伝するためでも、害のない化学物質を「産業革命以降に生まれた諸悪の根源だ!」と糾弾するためでもありません。
全くの誇張なく、私たちは人類有史、化学産業が発展して以来、最もラッキーな時代を生きています。しかし同時にアンラッキーでもあります。なぜでしょう?
先ずラッキーなのは、GHSという全世界の化学物質に関する有害性の表示を統一する基準が導入されたためです。誰でも化学物質の有害性を理解できる様にルールが整えられたのです、素晴らしいことです。アンラッキーなのは、そのルールをよほど化学の分野に関わっていないと知らないケースが多いことです。
GHSとはGlobally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals、訳すと化学品の分類および表示に関する世界調和システム、です。
……一体何を言っているのかわからない?その通りだと思います!もう少しだけページを閉じずに読んでみて下さい。
一つ一つ分解してみましょう、まず「Classification and Labelling of Chemicals」ですが、これは「化学品の分類および表示」という意味ですね。
みなさんの家に動物図鑑はありますか?そうです、みなさんがお子さんの頃にどこかで読んだことのある、あの図鑑です。(今、お子さんだったり、大人になっても読んでいる方はすみません!)
図鑑にはいろいろな種類の動物が載っていますね。ハトだったり、ライオンだったり、カマキリだったり。動物は大抵の場合、分類されているでしょう?ハトは「鳥」の仲間たちと載っているし、ライオンは「哺乳類」の仲間たちと載っている。「鳥」の項目にカマキリが載っていたらおかしい訳です。第一、天敵である鳥に囲まれてカマキリが可哀そうでしょ?
化学品も同じで、その性質によって分類されてきました。例えば、オナラの成分に数%含まれるメタンは可燃性、つまり容易に燃える性質を持っています。オナラの気体に火を近づけると燃えます。(危険なので個人では絶対に行わないように!)
メタンは可燃性ガスという分類をされている訳です。
そして、その分類や表示のルールは世界各国がそれぞれの法律などで独自に決めていたのです。
例えば国によってルールが異なる例は沢山ありますよね。日本では車は左通行ですが、欧米では右通行。日本では靴を脱いで家に入りますが、欧米では靴を履いたまま入るetc...
そんな風に化学品のルールも国によって違うと考えて頂けたら分かり易いでしょうか?
車で道路を走っていると、この様なマークを付けているトラックを見たことありませんか?
これは、日本の消防法という法律で危険物というカテゴリーに該当する化学物質を積載しているトラックは、「危」のマークを取り付けないといけない、という表示のルールのためです。しかしこのマークは日本独自のもので、例えばアメリカでは違う法律があるので通用しません。しかも危険物の定義も日本とアメリカでは異なっています。
日本とアメリカの文化や制度の違いの例
化学品の分類についてザッとお分かりいただいたところで、次は「Globally Harmonized System」です。これは直訳すると「世界調和システム」。簡単にいうと世界で共通のルールにしましょう、ということです。世界各国で化学品の分類の仕方を一つのルールにしよう、ということです。それまでは各っているかわかりますか?国で化学品の分類の仕方も違えば、化学品のパッケージに表示する内容も違っていました。
そういった状況を改善するために、化学品を使用する人が理解しやすく、安全に使用できるように、GHSというシステムが導入されたのです。ユーザーフレンドリーということですね。
GHSという制度は国連が2003年に公布しました。それからも2年ごとに改訂され、今日に至っています。もう制度が規定されて20年近くになるのです。中々の歴史だと思いませんか?
そんなGHSという制度ですが、一つ問題点があります。それは私がこの文章を書いているきっかけでもあるのですが、制度を知っている人が少ないということです。
突然ですかクイズです。皆さんは下のマークを見て、その化学物質がなんの性質を持っているかわかりますか?
私の妻に答えてもらいましょう。ちなみに妻は化学とは無縁の文系女子です。
私:「このマーク、なんの意味だと思う?」
妻:「爆発するもの?」
流石は自慢の妻です。このマークは「爆弾の爆発」と呼び、爆発物を表しています。私は初めて見たとき、飛び石かと思いました 笑。
皆さんは何だと思いましたか?
次はこの2つのマーク。似ていますね。それぞれ何のマークかわかりますか?
またもや妻に聞いてみましょう。
妻:「うーん、低いところで燃えるものと高いところで燃えるもの?」
このマークはどちらも炎を表し、右側のマークは「円上の炎」と呼び、助燃剤を表します。物が燃えるのを助けるものですね。酸化物などが該当します。ちなみに、私は右側のマークを初めて見たとき、『ドラゴンボール』のスーパーサイヤ人かと思いました。
どちらも正解した方は素晴らしい!もうこの記事を読む必要はないかも知れません。
間違った方、わからなかった方も大丈夫!多分すべてのマークの意味を知っている人はほとんどいません。今から知っていきましょう。今後、GHSについてはより詳しく解説する回を設けるつもりです。
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